令和元年6月7日に、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立、同月14日に公布されました。

 例えば、営業の許可を申請する場合に、多くの業法(各種の営業の許認可について定めた法律を便宜上ここでは業法と書きます)では、許可を受けることができない、いわゆる欠格条項が規定されていて、その一つに、申請人が成年被後見人や被保佐人でないこと、といった制限が設けられています。上記の法律は、これらの制限を廃止ないし緩和する措置を規定したもので、公務員、士業、法人役員の資格に係る制限に加え、営業許可等の欠格条項について、各法律ごとの見直しと条文の改正を規定したものです。

 そういう広範囲の法律を包含するものでもあり、その名称がやや長々しいものになっていますが、一般には略して〈欠格条項削除法〉が通称のようになっていますから、ここでもそれに従います。

 成年後見制度については、平成28年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立し、同年5月13日に施行されました。この法律は、高齢社会に向かう我が国の現状を踏まえ、「認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより財産の管理又は日常生活等に支障がある者を社会全体で支え合うこと」が重要な課題であるとして、その社会的システムとなる成年後見制度の活用を促進するための施策や関係機関の協力をうたっています。この法律に定める基本方針が、制度促進の要点といっていいと思いますので、それを引いておきます。

  1. 成年後見制度を利用し又は利用しようとする者の能力に応じたきめ細かな対応を可能とする観点から、成年後見制度のうち利用が少ない保佐及び補助の制度の利用を促進するための方策について検討を加え、必要な措置を講ずること。
  2. 成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度について検討を加え、必要な見直しを行うこと。
  3. 成年被後見人等であって医療、介護等を受けるに当たり意思を決定することが困難なものが円滑に必要な医療、介護等を受けられるようにするための支援の在り方について、成年後見人等の事務の範囲を含め検討を加え、必要な措置を講ずること。
  4. 成年被後見人等の死亡後における事務が適切に処理されるよう、成年後見人等の事務の範囲について検討を加え、必要な見直しを行うこと。
  5. 成年後見制度を利用し又は利用しようとする者の自発的意思を尊重する観点から、任意後見制度が積極的に活用されるよう、その利用状況を検証し、任意後見制度が適切にかつ安心して利用されるために必要な制度の整備その他の必要な措置を講ずること。
  6. 成年後見制度に関し国民の関心と理解を深めるとともに、成年後見制度がその利用を必要とする者に十分に利用されるようにするため、国民に対する周知及び啓発のために必要な措置を講ずること。
  7. 成年後見制度の利用に係る地域住民の需要に的確に対応するため、地域における成年後見制度の利用に係る需要の把握、地域住民に対する必要な情報の提供、相談の実施及び助言、市町村長による後見開始、保佐開始又は補助開始の審判の請求の積極的な活用その他の必要な措置を講ずること。
  8. 地域において成年後見人等となる人材を確保するため、成年後見人等又はその候補者に対する研修の機会の確保並びに必要な情報の提供、相談の実施及び助言、成年後見人等に対する報酬の支払の助成その他の成年後見人等又はその候補者に対する支援の充実を図るために必要な措置を講ずること。
  9. 前二号の措置を有効かつ適切に実施するため、成年後見人等又はその候補者の育成及び支援等を行う成年後見等実施機関の育成、成年後見制度の利用において成年後見等実施機関が積極的に活用されるための仕組みの整備その他の成年後見等実施機関の活動に対する支援のために必要な措置を講ずること。
  10. 成年後見人等の事務の監督並びに成年後見人等に対する相談の実施及び助言その他の支援に係る機能を強化するため、家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体における必要な人的体制の整備その他の必要な措置を講ずること。
  11. 家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体並びに成年後見人等、成年後見等実施機関及び成年後見関連事業者の相互の緊密な連携を確保するため、成年後見制度の利用に関する指針の策定その他の必要な措置を講ずること。

 今回の欠格条項削除法は、主にこの基本方針の2に則った措置ということになります。すなわち、成年被後見人等であることを理由に不当な差別が生じないための配慮の一環といっていいでしょう。法律はさらに、施策の推進のための基本計画の策定や関係機関の協力体制について定めていますが、ここでは、筆者の専門分野である許認可関連の改正について、次回以降に整理しておきます。