欠格条項削除法は、「成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく措置として、成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう」、成年被後見人等について定められた欠格条項等の措置の適正化を図る趣旨で制定され、令和元年6月14日に公布されました。この法律が対象とする欠格条項等を定めた法律の範囲としては、公務員等、士業等、法人役員等、営業許可(法人含む)等の分野があり、その施行の日については、各法律の対応によって、次のように区分されています。

  • 欠格条項を削除するのみのもの……原則として公布の日
  • 府省令等の整備が必要なもの……原則として公布の日から3月
  • 地方公共団体の条例その他関係機関等の整備が必要なもの……原則として公布の日から6月

 このうち、営業の許認可に関連するものの多くは、府省令の整備を要するものとなっていますので、2に該当します。

 今回の欠格条項削除法の対象となっている営業や業法を、ざっと挙げてみると、風俗営業、古物営業、質屋営業、貸金業、酒類販売業(酒税法)、旅館業、医薬品・医療機器等営業(薬機法)、介護保険事業、労働者派遣事業、建設業、宅地建物取引業、自動車運送事業、旅行業などなど、これを見ても営業に関わる許認可が多岐、広範囲にわたることが実感できるのですが、いくつか代表的なものをピックアップしてみたいと思います。

 その前にこの法律の主旨となっている成年後見制度についておさらいしておきます。

 成年後見制度は、判断能力が十分でない場合(例えば、高齢に伴う認知症など)に、その本人のために法律行為その他生活上の支援・保護を行うもので、民法に次のように定めています。

  • 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
  • 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。
  • 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。

 すなわち、判断能力の程度によって成年後見、保佐、補助の3パターンが設けられています。家庭裁判所の選任を受けてこれらの業務に従事する人を、それぞれ成年後見人、補佐人、補助人(以下、成年後見人等とします)といいます。また、これらの支援・保護を受ける人を「被」を付加して、成年被後見人、被保佐人、被補助人(以下、成年被後見人等とします)といいます。

 成年後見人等の業務や成年被後見人等が自分でできる行為の範囲等については、民法の規定に従い、その状況に応じて代理権や同意権・取消権に基づいて成年後見等が行われることになります。これは、民法の規定に基づいて行われる、いわゆる〈法定後見〉で、このほかに、当事者間の契約に基づいて行われる〈任意後見〉があり、その要領等については「任意後見契約に関する法律」に定められています

 本稿は、6月に成立した欠格条項削除法の内容を整理するために書いていますので、成年後見制度の詳細については立ち入らず、それはべつの機会に譲りたいと思います。すでに書きましたように、営業の許認可について定めた業法では、許可を受けるのに不適格とされるいわゆる欠格条項に該当するものとして成年被後見人等を規定しています。欠格条項削除法は、これらの業法の制限を一括して廃止・緩和しようというのが大きな柱の一つになっています。

 次に、いくつかの業法等についてそれらの改正内容を見ておきたいと思います。