欠格条項削除法の規定について、主に営業の許認可に関連した部分をいくつかの業法に沿って見てきました。

 一つ念頭に置かなくてはならないのは、今回の欠格条項削除法は、「成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう」、許認可などの権利の制限規定の適正化を図るということにあります。実務に即してこれを見ると、成年被後見人等は「後見登記等に関する法律」によって法務局に成年後見等の登記がされます。許認可申請などの手続きにおいては、欠格条項に基づいて、成年被後見人等に該当しないことを、この登記がされていないことの証明を受けることで疎明するようになっています。

 成年後見制度は、事理を弁識する能力に問題のある人を支えることを主旨としているのですが、欠格条項が成年被後見人等に一律に制限を加えるのは、成年後見制度の利用促進のためには不合理な要因になっているという判断があるでしょう。例えば、事理を弁識する能力、という一点に着目する場合に、それを成年被後見人等に該当するかどうかだけで判別するのには疑問がある、という指摘もされているようです。成年被後見人等を欠格条項から削除するのに併せて、府省令等で個別審査規定を設けるのには、そうした背景を反映しているのかもしれません。

 もう一つ、これに関連して目に止まったのが、欠格条項を規定している法人等に関わる法律の中で、「会社法」と「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(一般社団・財団法人法)は今回の法改正の対象から除外されていることです。改正法の附則にこの2法について、「法人の役員の資格を成年被後見人又は被保佐人であることを理由に制限する旨の規定について、この法律の公布後一年以内を目途として検討を加え、その結果に基づき、当該規定の削除その他の必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされています。理由はいくつかありそうですが、例えば営業許可等を定めた法律の場合、許認可を行う行政庁がありますから、府省令等で「心身の故障により業務を適正に行うことができない者」について個別審査規定を設けて対処することができます。ところが、会社法、一般社団・財団法人法の役員は、法人の役員については各法人で選任して登記するだけの手続きですから、監督する官署があるわけでなく個別審査規定等も設けにくいという説明もされています。一般社団・財団とよく比較検討されるNPO法の場合は、法人の設立・運営が内閣府(実務上は主たる事務所の所在する都道府県知事等)の監督下に置かれていますから、欠格条項削除法で個別審査規定が設けられていたりするのですが、両者の性格の違いがこんなところにも出ています。

 以上、6月に公布された欠格条項削除法について、許認可等の実務にどのような影響をもたらすかを中心に整理してみました。まだ個別審査規定など今後に待つ部分もありますが、成年被後見人等の扱いは各業法の欠格事項として許可等を申請する場合の留意点の一つでしたから、実務上の対応がどう変わってゆくのか注目しているところです。