民泊サービスの新たな営業形態を制度化した住宅宿泊事業法がまもなく施行されますが、現行の旅行業法に基づく営業として簡易宿所による方法があります。住宅宿泊事業法が定める住宅宿泊事業の枠組みでの営業が難しい場合は、簡易宿所も選択肢の一つとして検討に上るでしょう。民泊を意識した簡易宿所の許可基準の見直しなども行なわれていますから、現時点での簡易宿所の許可について取り上げます。

まず旅館業法では、旅館業を、つぎの4業種に区分しています。

  • ホテル営業
    洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
  • 旅館営業
    和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
  • 簡易宿所営業
    宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業
  • 下宿営業
    施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業

※平成29年12月に旅館業法の一部が改正され、「ホテル営業」と「旅館営業」が、「旅館・ホテル営業」に統合されています。この改正は、6月15日に施行されることになっていますので、改めてべつに書きます。

簡易宿所の許可事務

簡易宿所を営むには、都道府県知事(保健所設置市または特別区は市長または区長)の許可を受けなくてはなりません。

許可を受けるにはつぎの要件を満たす必要があります。

  1. 申請にかかる施設の構造設備が定める基準に適合していること
  2. 施設の設置場所が公衆衛生上不適当でないこと
  3. 欠格事項に該当しないこと
  4. 施設の設置場所が、次に掲げる施設の敷地の周囲おおむね100メートルの区域内にある場合において、その設置によって当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがないこと
    ・学校教育法に規定する学校
    ・児童福祉法に規定する児童福祉施設
    ・社会教育法に規定する社会教育に関する施設その他の施設で前二号に掲げる施設に類するものとして条例で定めるもの

なお許可を受けた営業者は、営業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければなりません。この措置については、政令及び都道府県の条例で基準が定められています。

構造設備の基準

政令に定める簡易宿所の構造設備要件は次のとおりです。

  1. 客室の延床面積は、33平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を10人未満とする場合には、3.3平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
  2. 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね1メートル以上であること。
  3. 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
  4. 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
  5. 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
  6. 適当な数の便所を有すること。
  7. その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。

なお、福岡市など旅館業法の改正に対応して施行条例を改正し、これに準じた民泊に向けた規制緩和を行なった自治体もあります。住宅宿泊事業は民泊に特化した制度になりますが、事業の実情によっては簡易宿所による営業が視野に入るでしょう。

特区民泊

旅館業法による簡易宿所、住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業のほかに、もう一つ国家戦略特区による方法があります。現在この指定を受けているのは、東京都大田区、大阪市と大阪府の他33市町村、千葉市、新潟市、北九州市です。これらの特区の指定を受けた自治体では、政令で定める条件に従って都道府県知事等の認定を受け民泊事業を営むことができます。利用期間などの要件はありますが、旅館業法による許可に比べると取り組みやすい方法になるでしょう。

北九州市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)について(北九州市)