HACCP(ハサップ)は”Hazard Analysis and Critical Control Point”の略で、原材料の受入れから製品の出荷に至る全工程を通じて、発生する可能性のある危険要因(ハザード)を分析し、防止するための管理手法です。
すなわち、食中毒等の細菌による汚染や異物の混入といった阻害要因を除去し、食品の安全・衛生を確保する管理手法として米国で開発されたものですが、EUをはじめ各国がこれを採用し、現在では世界的な基準と言っていい位置づけになっています。日本でも早くからこれの導入が図られ、2021年施行の食品衛生法ではこれが飲食関連事業者が守るべき基準の一つとして組み込まれました。これは一般的な食品を対象とする制度化ですが、小規模事業者などをべつにして原則義務づけとなっています。
一方、サプリメントはどうだったかというと、すでに述べたようにサプリメント全般を一体として規制する法律はありませんが、その一部にはトクホなどのような法制度に基づいて流通する健康食品もあります。したがって、健康食品についてもHACCPは衛生管理を担う重要な手法として認識され、業界団体が主導してその導入が図られてきた経緯があります。すなわち、健康食品GMPの認証事業を推進する公益財団法人日本健康・栄養食品協会は、GMPと併せて、HACCPの導入を推奨し、事業者向けのHACCP手引書などを作成提供しています。自主基準ではありますが、こうした手法を自社の管理システムとしてその現場に適用しているサプリメント関連事業者も少なくないはずです。
HACCPはハザードに特化した管理手法ですが、それと異なり製造から出荷に至る工程全般の品質管理・安全管理を担うのがGMP(Good Manufacturing Practice)です。これはわが国の許認可制度の中では、薬事関連事業者が遵守すべき基準として制度化されたものがあり、医薬品・医薬部外品について、GMP省令(「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」)として義務づけされています。また、化粧品については義務づけではありませんが自主基準として化粧品GMP(ISO22716準拠)が示されています。
そして、健康食品については、業界における基準として厚労省の支援を受け同協会が認証するGMP(適正製造規範)が運営されているということになります。サプリメントをめぐる製造管理としては現状こんなところではないかと思いますが、今後に向けてはこれまでの反省に立って、法制度による規制を含めた検討が進むのかもしれません。