建設業者は事業年度が完了した4ヶ月以内に、決算にかかる変更届を所轄の行政庁に届け出る必要があります。提出書類の主なものとしてその事業年度の工事経歴と財務諸表がありますが、財務諸表については建設業会計に基づいたものでなければならず、これが多少煩瑣な事務になる場合があります。
建設業会計に従って経理事務を行なっている場合は問題ありませんが、そうでない場合もあって一通りではないようです。①通常の企業会計に従って設計された汎用ソフトで記帳、経理を行なっている場合、②兼業がある場合、が特に厄介になります。
会計処理に汎用ソフトを使っている場合、建設業独自の勘定科目が前提されていないので、科目を見なおして整理する必要が生じます。加えて、建設業会計では完成工事原価の扱いに特色がありますから、それを詳しく検討する必要もあります。
汎用ソフトの中には、独自の勘定科目をユーザーが追加登録できる仕様のものがありますから、そういう場合は例えば、一般的な「売上高」と異なる「完成工事高」という科目を追加して、建設工事によるいわゆる売上を記録するといった方法を採ることもできるでしょう。
製造業におけるいわゆる「製造原価」に当るのは「完成工事原価」ですが、これは建設業会計では売上や経費の計上の基準や外注費や労務費の扱いなど留意すべきテーマがいくつかあります。もちろん、この場合もまず建設業会計に則った科目設定を用意して会計処理を行なうのが前提になります。
はじめから建設業会計に則って会計処理を行なっている場合は、それをそのまま決算変更届に反映させることによって提出資料を準備することができますが、そうでない場合、例えば一般的な企業会計の方式で財務諸表を作成している場合、決算変更届の作成に当って、財務諸表を建設業会計に則ったものにする必要があります。
これを実務上どう処理するかというのがしばしば直面する一つのハードルといってもよさそうです。勘定科目名の変更だけなら大した手間ではありません。そうではなくて、建設業会計と整合させるためには、勘定科目間の数値の振替えなどを伴う場合もあります。例えば、建設業会計における「通信交通費」は、「通信費、交通費及び旅費」とされていますから、企業の方針としてこれらを区分して記帳したとしても、建設業会計では一括りにまとめる必要があるというわけです。
このような財務諸表の各科目の振替えは、EXCELのような表計算ソフトを利用する場合、lookup関数などを使って、建設業会計の勘定科目に集約するようにするのが一つの方法でしょう。その上で、定められた財務諸表の書式に出力するようにすれば多少の手間はかかってもとりあえず作業の流れを定型化できます。
もっとも、EXCELでそういう一連の流れを組み込むのであれば、いっそACCESSで専用の財務諸表入出力ツールを作成するのが無難ではないかとも思います。その場合は、勘定科目振替テーブルを一つ用意して、建設業会計の勘定科目にそのテーブルを通して変換できるようにすればよさそうです。建設業者にとって決算後の報告は毎年の定例業務ですから、そういうものを一つ作成しておけば、以降の作業の効率化を図ることもできるでしょう。
とはいえ、面倒なのは兼業がある場合で、これはもう少し手を加える必要もありそうですが、決算の度に手作業で整理するよりは手数は省けるはずです。それにもしかすると、脚光を浴びているAIとやらがこういう煩雑な作業を簡略化してくれる日が来るのかもしれません。期待して良いものかどうかはロートルには分かりませんが。