特定名称酒とか

猛暑に喘いだあげく、短い秋を駆けずり回っているうちに年が暮れ、新年を迎えてしまいました。

新しい年を実りある一年にしたいものです。

もうお屠蘇気分は抜けている頃ですが、清酒の特定名称酒についておさらいを。

よく聞く大吟醸とかいう呼び方は、平成元年に定められた「清酒の製法品質表示基準」に詳しく規定されています。

いわゆる「特定名称」で、その名称と製法品質の要件は次のように定められています。

  • 吟醸酒……精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの
  • 純米酒……白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの
  • 本醸造酒……精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの

やや専門的になりますが用語の解説を一部抜粋します。

  • 精米歩合とは、白米(玄米からぬか、胚芽等の表層部を取り去った状態の米をいい、米こうじの製造に使用する白米(いわゆる、こうじ米)を含む。)のその玄米に対する重量の割合。
  • 白米とは、農産物検査法により、3等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したもの。
  • 米こうじとは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでん粉を糖化させることができるものをいい、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合)が、15%以上のものに限る。
  • 醸造アルコールとは、でん粉質物又は含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコールをいう。
  • 醸造アルコールを原料の一部としたものについては、当該アルコールの重量(アルコール分95度換算の重量による。)が、白米の重量の10%を超えないものに限る。
  • 精米歩合、こうじ米の使用割合及び醸造アルコールの白米に対する重量の割合が基準に適合しているかどうかは、1%未満の端数を切り捨てた数値により判定する。
  • 香味及び色沢が良好なものとは、異味異臭がなく清酒固有の香味及び色沢を有するものをいう。

基本は上の三名称ですが、これがさらに原料、製造方法によって細分され大吟醸酒とかいうふうに下表の8名称に分類されています。

特定名称使用原料精米歩合こうじ米使用割合香味等の要件
吟醸酒米、米こうじ、 醸造アルコール60%以下15%以上吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒米、米こうじ、 醸造アルコール50%以下15%以上吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒米、米こうじ15%以上香味、色沢が良好
純米吟醸酒米、米こうじ60%以下15%以上吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒米、米こうじ50%以下15%以上吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒米、米こうじ60%以下又は特別な製造方法15%以上香味、色沢が特に良好
本醸造酒米、米こうじ、 醸造アルコール70%以下15%以上香味、色沢が良好
特別本醸造酒米、米こうじ、 醸造アルコール60%以下又は特別な製造方法15%以上香味、色沢が特に良好

清酒はこれらの特定名称酒か上記に該当しない普通酒に大別されることになります。

ついでに同基準に規定されている任意に表示できる事項についての基準をいくつか。

  • 原酒……製成後、水を加えてアルコール分などを調整しない清酒。
  • 生酒……製成後、一切加熱処理をしない清酒。
  • 生貯蔵酒……製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱処理した清酒。
  • 生一本……ひとつの製造場だけで醸造した純米酒。

このほかにこの頃、薫酒、爽酒、醇酒、熟酒といった表記を見ることがあります。これは「唎酒師」資格を管理する日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が提唱しているタイプ分類で、清酒の味わいを基準に分類したものですが、長くなるので詳しいことはSSIのホームページを参照していただくといいでしょう。

清酒がこれほど細かく分類されるのは、日本人の繊細な味覚の賜物といってもいいでしょうし、清酒の製造技術の進化の表われともいえそうです。