サプリメントの製造工程におけるHACCP(ハサップ)の導入について書きましたが、すでに飲食関連業についてはその許認可に際してHACCPは必須となっています。後先になりましたがそれについて。
飲食関連の営業については食品衛生法による営業の許可または届出の手続きがあります。2021年に改正施行されたこの法律の中で、飲食関連業者はHACCPに基づく衛生管理を行なうことが必須となりました。
改正食品衛生法では、営業の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置として、次の基準を定めることとしています。
- 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。
- 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組に関すること。
飲食関連事業を営む場合はこの基準に従い、施設環境を整え必要な取組を行なわなくてはなりません。
上の2がHACCPに基づく基準で、それは具体的には省令によって次のように示されています。法律の条文なので堅苦しく感じるかもしれませんが、重要なのでそのまま引用します。
- 危害要因の分析
食品又は添加物の製造、加工、調理、運搬、貯蔵又は販売の工程ごとに、食品衛生上の危害を発生させ得る要因(以下この表において「危害要因」という。)の一覧表を作成し、これらの危害要因を管理するための措置(以下この表において「管理措置」という。)を定めること。- 重要管理点の決定
前号で特定された危害要因につき、その発生を防止し、排除し、又は許容できる水準にまで低減するために管理措置を講ずることが不可欠な工程(以下この表において「重要管理点」という。)を決定すること。- 管理基準の設定
個々の重要管理点における危害要因につき、その発生を防止し、排除し、又は許容できる水準にまで低減するための基準(以下この表において「管理基準」という。)を設定すること。- モニタリング方法の設定
重要管理点の管理について、連続的な又は相当の頻度による実施状況の把握(以下この表において「モニタリング」という。)をするための方法を設定すること。- 改善措置の設定
個々の重要管理点において、モニタリングの結果、管理基準を逸脱したことが判明した場合の改善措置を設定すること。- 検証方法の設定
前各号に規定する措置の内容の効果を、定期的に検証するための手順を定めること。- 記録の作成
営業の規模や業態に応じて、前各号に規定する措置の内容に関する書面とその実施の記録を作成すること。
※食品衛生法施行規則別表18
これはいわゆるHACCPの7原則とされるもので、便宜的にこれを簡略化していえば、
1)各工程ごとにハザードが生じそうな要因を把握し→→2)それを防止するためのチェックポイントを明確にし→→3)これに従いハザードの防止・排除の方法を定め→→4)それらが適正に実施されていることをチェックする方法を定め→→5)懸念材料が発見されたときの措置の方法を定め(実行し)→→6)改善等の措置の効果を検証し→→7)それらの経過を記録する(その後に備える)。
ということになるでしょうか。
飲食関連業者はこの原則に従って衛生管理を行なうことが営業の要件として必須とされています。小規模事業者など一部の事業者については義務づけではなく、上記の事項を簡略化して公衆衛生上必要な措置を行う方法が認められていていますが、その場合もHACCPの手法を参考にして衛生管理を行なうという前提は免れません。
なお、上記の基準については、都道府県知事等は法律の基準に基づきつつ条例で必要な規定を定めることが認められ、各自治体で補足的なものが定められていますから、営業者や営業予定者はこれらの要件を十分理解して事業を営む必要があります。
行政書士の主な業務の一つに営業許可の取得事務があります。基本的には申請手続きの代理・代行になりますが、それに付随して要件として求められるこれらの許認可の制度上で求められる対応のサポートも重要になっています。HACCPもその一例で、スタッフの乏しい中小事業者にとっては悩ましい一面もあるかもしれません。とはいえ、それらは社会経済情勢の変化に伴う要請として制度化されて行くものですから避けて通ることもできません。これらはしばしば業界団体や民間の専門機関がサポートに当っていますが、許認可に関わる行政書士にとっても閑却できないテーマの一つではないかと思えます。
HACCPの実践については、すでに数多くの解説書が出ていますから、それらを参考にするといいでしょう。ウェブ上にも行政機関や関連団体が提供する手引類などもありますから参考までに以下を付記します。